特集号論文の募集 『生態心理学研究』
特集タイトル:アート/表現の二重性(duality)
掲載予定巻号:生態心理学研究 第15巻 (2023年5月頃)
特集エディタ:佐藤由紀(玉川大学),青山慶 (岩手大学),佐々木正人 (多摩美術大学)
企画趣旨:
本特集では,「二重性」をキーワードとして,表現,アート,鑑賞,制作等に 関する論文を広く募集する.
J. J. Gibsonは最後の本(1979)のpictures and visual awarenessと題された 14章で ‘A picture can only be seen in a context of nonpictorial surfaces.(Gibson,79. p.272)’ と書いた.いわゆる画像視覚の「二重性 duality」の指摘である.
ここでGibson(1979)は,画像から得る知覚は,包囲光から得る知覚よりも理解 するのが難しいと前置きしたうえで,「画家にしても写真家にしても,自分が現 実の場所やもの,人,出来事をまさに見ているという感じを,見る人に与えよう とするべきではない.そんなことをする必要はないし,そうしようとしたところ で,その努力は失敗に終わるに違いない」と指摘する.これは,いかに精巧で あったとしても,自然の不変項のすべてを提示することはできないためであり, また,情報には限りがないからである.
開口視を強制されていない鑑賞者は,画像に提示されている何かについて知覚し ながらその表面自体も知覚している.したがって画像は光景でもあり表面でもあ る.Gibsonはこれを「二重性」と呼んだ.
画家や写真家が「まさに見ているという感じを与えようとしている」のではない とすると,表現とは何に向かう活動なのか,また表現を鑑賞するものは何を体験 しているのだろうか.これが本特集の中心となるテーマである.
日本における生態心理学の表現およびアートに関連する文献として,2006年に 出版された『アート/表現する身体』(東京大学出版)がある.本書に収められ た研究を特徴づけるのは,アートや表現に深く魅了された者たちが「それを見続 けること」によってはじめて立ち現れてくるような知覚経験があること,そのオ リジナルな経験を捕獲するために「自前の方法」を作り出すことが相互に切り離 せない形で成立している点である.生態心理学におけるアートないし表現の研究 は,「知覚経験の終わらなさ」を根拠とする「見続けること」を動因とし,「方 法を作り出す」という知覚行為循環に巻き込まれるようにして開始されたといえ るだろう.
さて,本特集では,「二重性」をキーワードとして,表現,アート,鑑賞,制 作等を「見続けること(知覚し続けること)」で立ち現れる知覚経験の固有性に 接近するような論文が投稿されることを期待したい.また最近では,豊泉 (2021)が「三重性」こそ画像経験の本性であると指摘したが,本特集号では, 実証研究だけではなく理論研究も歓迎する.
参考文献
Gibson, J. James.(1979/2014)”The Ecological Approach to Visual Perception. ” Routledge
佐々木正人(編著)(2006)『アート/表現する身体』東京大学出版会
豊泉俊大.(2021). 画像経験の特異性—ギブソンの画像理論—.生態心理学研 究, 13(1), 3-14.
提出先
editor[at]jsep-home.jpを@に置き換えること.
スケジュール(予定)
2022年9月30日(金):原稿投稿締切
2022年11月18日(金):査読結果返送
2022年12月23日(金):修正原稿提出締切
2023年1月27日(金):再査読結果返送(採否決定)
2023年2月24日(金):最終原稿提出締切
2023年5月頃:「生態心理学研究」第15巻掲載